飛行機でうっかりパソコンを預け入れ荷物にしてしまった場合、その故障リスクや補償の有無が気になるところです。パソコンは精密機器で高価なため、航空各社は基本的に機内持ち込みを推奨しています。
本記事では、飛行機にパソコンを預けたときに考えられるトラブルや補償制度、さらに安全に預けるための注意点を解説します。大切なPCを安心して運ぶために知っておきたいポイントを確認しましょう。
飛行機にパソコンを預けてしまったのは大丈夫?
パソコンを飛行機で預け荷物にすること自体は可能ですが、基本的に大丈夫ではありません。
航空会社各社はパソコンを貴重品かつ壊れやすい機器として扱っており、預け入れずに機内持ち込みするよう案内しています。万一預け荷物に入れてしまった場合、そのパソコンが破損・紛失しても航空会社は責任を負わないのが一般的です。
つまり、預けて無事であるかどうかは運次第で、トラブルが起きても原則自己責任になります。
航空会社の約款では、パソコンなどの精密機器の破損・紛失に対する補償は免責と明記されています。例えば、ANAでは「パソコンなど電子機器は壊れても責任を負いかねるため、お預けにならないよう」注意喚起しています。
JALでも同様に、受託手荷物に入れないよう求めており、仮に預けて壊れても補償義務はないとされています。このため、「預けてしまったけど大丈夫か?」という疑問に対しては、残念ながら推奨されず、リスクを承知の自己責任となるという答えになります。
すでにパソコンを預けてしまった場合、フライト中にできる有効な対処策はほとんどありません。機内から荷物を取り出すことは通常できないため、まずは目的地到着後にスーツケースを受け取り次第、パソコンの状態を確認しましょう。
もし破損が判明したら、その場で直ちに航空会社スタッフに申告してください。申告が遅れると対応されないので注意が必要です。もっとも、後述するように航空会社からの補償は期待できないケースが多いですが、申告しておけば後日旅行保険での請求手続きに必要な証明書を発行してもらえる場合があります。
飛行機に乗る前に気付いた場合は、搭乗手続きカウンターで事情を説明すれば積み込んだ荷物を一時取り出せる可能性もゼロではありません。ただし搭乗直前では難しいため、今後はチェックイン前に貴重品を持ち出しておくことが肝心です。
空港でパソコンを預けたときの故障リスク
預け入れ手荷物にしたパソコンは、破損するリスクが高いです。航空機ではスーツケース等の荷物は積み下ろしの際にかなり乱雑に扱われることがあり、重量物同士がぶつかったり積み重なったりします。その衝撃や圧力によってノートPCの画面割れや内部部品の破損が起こる可能性があります。
つまり、いくら丁寧に梱包しても、輸送中の振動・衝撃で壊れるリスクを完全には避けられません。
実際に多くの航空会社が「預け荷物にパソコン等の電子機器を入れると破損の恐れがある」と警告しています。旅行情報サイトの説明によれば、スーツケースにしっかり包んで入れていても他の荷物との圧迫や衝撃で画面が割れたり部品が欠けたりするケースが報告されています。
空港の手荷物搬送では、荷物がベルトコンベアからコンテナに投げ入れられる場面も珍しくありません。特に、海外の空港では日本より雑に扱われる傾向があり、ノートPCが入ったバッグが遠くに放り投げられるような映像も報告されています。こうした衝撃でハードディスクが故障したり、バッテリー部分が損傷することもあります。最悪の場合、パソコン自体が通電不能になるなど使用不能に陥るでしょう。
また貨物室内は客室ほど快適ではなく、気圧や気温の変化もあります。過度の低温にさらされた直後に電源を入れると内部に結露が生じる可能性もあり、こうした環境変化も電子機器には負担です。さらに、預け荷物の中身が乱雑に移動してPC本体に圧力がかかると筐体の歪みや基板破損が起こりえます。以上のように、預け入れによる物理的ストレスでパソコンが故障するリスクは無視できません。
パソコンを預けると、紛失や盗難のリスクも高まります。航空機の乗継ぎミス等で荷物が目的地と別の空港に送られてしまう「ロストバゲージ」の事例も珍しくありません。仮にスーツケース自体が行方不明になれば、高価なPCを失う痛手は大きく、旅先での業務や思い出のデータも失われかねません。
また、海外空港では預け荷物から貴重品が盗まれるトラブルも報告されています。鍵付きスーツケースでも内部検査で開錠される場合があり、その際にパソコンが盗難に遭う危険も否定できません。以上の点からも、パソコンを預け荷物に入れることは非常にリスクが高いといえます。
パソコンが壊れたときの補償
預けたパソコンが破損しても、航空会社からの補償は基本的に期待できません。 航空各社の運送約款では、パソコンやカメラなどの精密機器は「壊れやすいもの」に分類され、それらの性質に起因する損害は免責事項とされています。したがって、荷物の運搬中にPCが壊れても、「壊れものを預けたお客様側の責任」という扱いになるのです。航空会社は原則として弁償しないため、修理費や買い替え費用は自己負担となるケースがほとんどです。
JALやANAでは公式に「時計・カメラ・パソコン等の壊れやすいものはお預けにならないよう」案内されており、万一損害が出ても責任を負わない旨が示されています。また、ANAの免責事項には、「楽器・カメラ・パソコン等の精密機器の破損は責任を負いかねます」と具体的に明記されています。
例外的に、荷物全体が紛失した場合や航空会社側の重大な過失による破損が認められた場合には、一部補償が行われる可能性があります。ただし、その場合も上限額が定められており、例えばJAL国内線では事前に価額申告のない手荷物の賠償限度額は一人あたり15万円までと規定されています。
国際線ではモントリオール条約に基づき原則1,288SDR前後(約20万円弱相当)が上限となります。しかし、これらはスーツケース全体の紛失や破損に対する総額であり、パソコンの実際の価値がそれ以上でも超過分は支払われません。また貴重品であるパソコンをあえて預けた場合、航空会社から過失相殺的に支払いを渋られるケースもあります。
飛行機でパソコンを預ける時の注意点
飛行機でやむを得ずパソコンを預け入れる場合、注意すべきポイントが大きく3点あります。以下に、預ける際の安全対策として「電源・バッテリー管理」「梱包方法」「事前の備え」の3つを順に説明します。
注意1:パソコンの電源を完全に切ること
パソコンを預ける際は必ず電源をシャットダウンし、スリープ状態のままにしないでください。リチウムイオン電池を内蔵した電子機器は、輸送中に誤作動すると発火・発煙のおそれがあります。国土交通省の指導や各社ルールでも「電源を完全にOFF(スリープ不可)にする」ことが義務づけられています。JALも公式に「パソコンなど電池内蔵機器を預ける場合は必ず電源をオフにするよう」案内しています。
電源を切ったら、フタが確実に閉じてスイッチが押されない状態にしましょう。万一荷物が圧迫されて電源ボタンが押されると起動してしまう恐れがあるため、ラップトップの場合は本体と画面の間に薄いウレタンシートなどを挟むと振動で電源が入る事故を防げます。
また、外付けマウスのUSBレシーバーなど突起物は抜いておくのが無難です。さらにバッテリー残量は満充電にしないことも一策です。リチウム電池は満充電時より中程度の残量の方が発熱リスクが下がるとされています。可能であれば50%程度に調整してから電源を落とすと安心です。
注意2:衝撃対策のため念入りに梱包する
預け入れるパソコンは、丁寧かつ厳重に梱包して衝撃から守る工夫が必要です。具体的には、PC本体をクッション材や衣類で何重にも包み、スーツケースの中央部に配置します。周囲を上下左右から衣服で埋め尽くすことで、外部からの衝撃を少しでも緩和できます。
特に、ノートパソコンの画面部分は割れやすいので、画面とキーボードの間に厚手の服やエアクッションシートを挟み、本体の四隅(角)が直接衝撃を受けないようガードしてください。
スーツケース内でパソコンが動かないよう固定することが大切です。余裕があればハードタイプのPCケースや厚手のインナーバッグに入れ、その周囲を衣類で詰めると安心度が増します。スーツケースの壁側ではなく中心部に挟み込むことで、外側からの衝撃を両側の衣類で吸収できます。
また、スーツケース自体も堅牢なものを選びましょう。フレームタイプで耐衝撃性に優れたハードケースであれば、外圧から中身を守れる可能性が上がります。逆にソフトケースの場合は衝撃がそのまま中身に伝わりやすいので、より念入りな緩衝対策が必要です。

注意3:万一に備えデータと補償の準備を
パソコンを預ける以上、最悪壊れる前提で備えておくことも大切です。具体的にはデータのバックアップと保険など補償手段の確認を事前に行いましょう。
データバックアップ: 旅行や出張前に、大事なデータはクラウドや外部ストレージにコピーしておく習慣をつけてください。仮にパソコン本体が壊れて起動しなくなっても、バックアップがあれば別の端末で業務を続行できます。特に業務データや旅行中に撮影した写真などは紛失すると取り返しがつきません。
外付けHDD/SSDやUSBメモリにバックアップする場合はそれ自体を機内持ち込みし、パソコンと一緒に預けないようにしましょう。
ノートパソコンは預けない方がいい
飛行機でパソコンを預け入れることは可能ですが、故障や紛失のリスクが高く推奨されません。 航空会社はパソコンを壊れやすい貴重品として扱っており、預けた場合に損害が生じても基本的に補償は受けられないのが実情です。
どうしても預ける必要がある場合は、電源を切る・厳重な梱包・保険とバックアップの備えを徹底し、万一に備えることが大切です。パソコンは可能な限り機内に持ち込み、ご自身で管理することで、貴重なデータとデバイスを守り、安全かつ安心な空の旅を心掛けましょう。
参考文献
- 全日本空輸(ANA)公式サイト 「貴重品・壊れやすいもの・日常必需品」(2025年9月5日取得)【ANAではパソコン等の電子機器は預けないよう案内。破損・紛失しても責任を負わない旨を明記】ana.co.jp
- 日本航空(JAL)公式サイト 「国際線 手荷物に関する制限事項」(2025年9月5日取得)【リチウム電池内蔵機器を預ける場合の注意点(電源OFF・防護梱包)を記載】jal.co.jp
- トラベリスト旅行コラム 「飛行機でパソコンを使いたい!機内持ち込みや預け入れの注意点をご紹介」(2023年4月27日)(2025年9月5日取得)【預け荷物ではPCが破損する危険性が高く、破損しても自己責任となること、ロストバゲージのリスクについて解説】travelist.jptravelist.jptravelist.jp
- JAL公式サイト 「手荷物の不具合について(破損・紛失)」(2025年9月5日取得)【受託手荷物の賠償限度額(無申告の場合15万円)や、破損時の申告期限(7日以内)について記載】jal.co.jpjal.co.jp
- 旅イングリッシュ(個人ブログ)「【破損】飛行機でPCを預け入れてしまった悲劇的末路と補償の有無」(2023年8月19日)【ANA約款上の免責事項抜粋や、携行品保険でノートPCが補償対象となる旨を紹介】tabi-english.comtabi-english.com
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