飛行機は世界で最も安全な移動手段の一つとされ、近年は年々安全性が向上しています。実際、2018~2022年における民間航空機で死亡事故に遭う確率は「1,370万回の搭乗につき1回」と報告されました。

しかし一度大事故が起これば被害は甚大で、そのインパクトが飛行機への根強い恐怖感につながっているのも事実です。本記事では飛行機で事故が起きる確率や世界の航空機事故(死亡者数)のワーストランキングTOP5を解説し、合わせて日本で発生した史上最悪の航空事故についても説明します。
飛行機で事故が起きる確率
飛行機事故が発生する確率は極めて低く、日常的に飛行機を利用しても「事故に遭う可能性は数百万分の1以下」と言えます。
国際航空運送協会(IATA)の報告によれば、2024年は世界中で約4,060万回の搭乗に対し死亡事故が7件発生したのみでした。これは100万回の搭乗あたり約0.17件の割合で、前年の1件から増加したものの、依然として極めて稀な頻度です。長期的にも航空機の安全性は向上しており、1960–70年代には数十万回に1回だった致命的事故の確率が、直近では1,370万搭乗に1回まで低減しています。
統計データが示す通り、飛行機で重大事故に遭遇する可能性は日常生活の他のリスクと比べても非常に低い水準です。たとえば、自動車事故による死亡率は航空機を遥かに上回ります。
一方で、万一の航空機事故では多数の死傷者が一度に発生し社会的影響も甚大となるため、各国の航空当局や航空会社は日々安全対策を強化しています。
「事故は極めてまれだが決して忘れてはならない」とIATAも強調しており、安全運航への不断の努力が続けられています。利用者としても、シートベルト着用や非常口位置の確認など基本的な対策を守ることでリスクをさらに下げることが可能です。
飛行機のやばい事故世界ランキング
飛行機事故の中でも死者数が特に多かった「世界の航空機事故ワースト5」を、以下に第5位から第1位まで紹介します。大惨事となった背景や原因にも触れますので、これから5つの事故について順に見ていきましょう。
第5位 1980年サウジアラビア航空163便火災事故
サウジアラビア・リヤドで発生した事故です。飛行中に貨物室で火災が発生し緊急着陸には成功しましたが、乗員乗客301人全員が犠牲となりました。出火後の対応に複数の不手際が重なり、着陸後も機内への消火・避難が間に合わなかったことが悲劇を拡大しました。
機体はロッキードL-1011トライスターで、火災の原因は特定されていませんが、積荷の可燃物に引火した可能性が指摘されています。当時は緊急時対応手順の不備もあり、結果的に誰一人脱出できないまま機体が炎上してしまいました。
「サウジアラビア163便事故」は、火災による航空事故として史上最悪規模となり、この教訓から機内防火体制や乗員の緊急脱出訓練が大幅に強化されました。
第4位 1974年トルコ航空981便墜落事故
パリ近郊で発生した当時世界最悪の事故で、乗員乗客346名全員が死亡しました。マクドネル・ダグラスDC-10型機の後部貨物室ドアの欠陥が原因でした。離陸直後に貨物ドアが機体から脱落し機内の与圧が急減圧、床下を通る全ての油圧系統が断裂して操縦不能に陥ったのです。
ドア設計の不良は2年前にも指摘され改善勧告が出ていましたが、徹底されないまま同型機で再び悲劇が起きました。本事故を契機にDC-10の貨物ドア機構は改修が義務付けられ、また油圧系の冗長化(フェールセーフ設計)など機体設計・整備に関する安全基準が見直されました。
第3位 1996年ニューデリー空中衝突事故
インド・ニューデリー上空でサウジアラビア航空機とカザフスタン航空機が空中衝突し、乗員乗客計349名全員が亡くなった惨事です。当時ニューデリーの空域は混雑しており、両機の高度指示を巡るパイロットの誤解と管制ミスが重なって正面衝突を招きました。
特に、カザフスタン機の乗員が英語での高度指示を誤って解釈し、指示高度よりも低い高度へ降下してしまったことが直接の原因とされています。さらに、事故当時は視界不良(厚い雲)で互いの機影を直前まで確認できず、衝突を回避できませんでした。
「世界最悪の空中衝突事故」となったこの事件を受け、インド国内の航空管制体制の見直しやパイロットの英語運用能力向上策が講じられ、空域管理の国際ルールの是正も進められました。
第2位 1985年日本航空123便墜落事故
群馬県の山中に日航ジャンボ機が墜落し、乗員乗客524人中520人が死亡した事故です。本事故は日本で史上最悪であるだけでなく、単独機による事故として世界最多の犠牲者を出しました。
事故機ボーイング747SRは7年前の尻もち事故で後部圧力隔壁に受けた損傷の修理不備があり、飛行中に隔壁が破断して機体尾部が破損、垂直尾翼の大半と全油圧系統を喪失しました。
操縦不能に陥った機体は32分後に山間部へ墜落し大破します。奇跡的に4名が生存しましたが、救助の遅れもあって犠牲者は520名にのぼりました。この「日航123便事故」を契機に日本の航空安全対策は飛躍的に強化され、以後、機体整備の徹底や非常時対応訓練の充実など再発防止策が図られました。
第1位 1977年テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故
スペイン領カナリア諸島テネリフェ島で発生した航空史上最悪の死亡事故です。濃霧の滑走路上でパンアメリカン航空機とKLMオランダ航空機のボーイング747型機同士が衝突し、乗客乗員計644人中583人が死亡しました。
小さな空港に多数の臨時着陸機がひしめく中、テロ予告による混乱や管制との通信不一致もあって、KLM機が離陸許可を誤認し滑走を開始、まだ滑走路上にいたパンナム機と激突しました。
パイロットの判断ミスとコミュニケーション不足が重なった典型例であり、事故後、航空用語の標準化や地上管制手順の改善が進められました。この惨事は「テネリフェの悲劇」と呼ばれ、現在も単一の航空事故による最大の犠牲者数(583名)を記録しています。
以降、教訓としてCRM(クルー・リソース・マネジメント)訓練が世界中で導入され、乗員間・管制官との的確な意思疎通や協調体制を確立することで安全性の向上に大きく寄与しました。
過去の教訓を活かすしかない
飛行機事故は発生確率こそ極めて低いものの、一度起これば甚大な被害をもたらします。本記事では世界の死亡事故をランキング形式で見てきましたが、その多くはヒューマンエラー(人的ミス)や機材の欠陥、コミュニケーション不全などの複合要因によって引き起こされていました。
とはいえ、過去の悲惨な事故から学んだ教訓により安全対策は飛躍的に進歩しています。実際、航空各社や当局の努力により年々事故率は低減傾向が続いており、現在の航空機は極めて安全な交通手段となりました。
読者の皆さんも空の旅を楽しむ際には、過去の事故の犠牲者が今の安全を支えていることに思いを致し、引き続き基本的な安全ルールを守って搭乗するようにしましょう。
参考文献
- Forbes JAPAN公式サイト「航空機事故で死亡する確率は『毎年約7%下がり10年ごとに半分に』米MIT検証」(2024-12-26公開)forbesjapan.com
- 京都産業大学 社会安全・警察学研究所「航空機事故をみる視点 – 航空史上最大の犠牲者を出した事故(テネリフェ事故)」(2024公開)kyoto-su.ac.jp
- 日本赤十字社 プレスリリース「『日本航空123便墜落事故』から40年 – 520人の犠牲者を出した未曾有の事故」(2025-08-01)jrc.or.jp
- ダイヤモンド・オンライン「インドの飛行機事故現場で目撃した『ご遺体』への冷遇ぶり」(山田真美著, 2024-11-30)diamond.jp
- Wikipedia『トルコ航空DC-10パリ墜落事故』(最終更新2023-07-03)ja.wikipedia.org
- Wikipedia『サウジアラビア航空163便火災事故』(最終更新2023-08-13)ja.wikipedia.org
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