飛行機の離陸に恐怖を感じるのは実は珍しくなく、多くの人が同じ悩みを抱えています。本記事では、離陸時に不安を覚える人の割合や主な原因、さらには恐怖を克服して安全にフライトを楽しむための具体的な対策や簡単に実践できる不安解消法を、専門家のアドバイスに基づき詳しく解説します。
飛行機の離陸が怖いと感じる人の割合
結論として、飛行機の離陸に不安を感じる人は決して少なくありません。世界的に見ると3人に1人以上がフライトに関連して何らかの不安を経験するとされており、日本でも「離陸が怖い」という声は珍しくない状況です。

専門用語では飛行機恐怖症とも呼ばれるこの不安は、程度の差こそあれ多くの乗客に見られます。例えば、欧米の調査では全人口の約30~40%が飛行機に不安を抱くとの報告があり、日本人でも「飛行機に乗るのが苦手」と感じる人は相当数存在します。こうした恐怖心は女性に多い傾向があるとの研究報告もありますが、性別を問わず離陸時の独特な感覚に緊張を覚える人は少なくありません。
このように、飛行機の離陸に恐怖を感じることは決して異常ではなく、むしろ一般的な現象です。重要なのは、恐怖心を正しく理解し対処することでフライトを快適にできる点です。
飛行機の離陸が怖いと感じる理由
飛行機の離陸時に怖さを感じるのには、主に3つの理由が考えられます。
理由1:離陸時は事故リスクが高いと感じるため
離陸は飛行の中で緊張を要する局面であり、乗客は「この瞬間が一番危険では」と感じて不安になることがあります。事実、航空業界では離陸後約3分と着陸前約8分を「魔の11分間」と呼び、過去の航空事故の多くがこの時間帯に集中しています。
現役パイロットへの調査でも「離陸時のほうが着陸時より緊張する」と答えた人が7割以上にのぼりました。このような背景知識から、乗客側も離陸の瞬間に特別な不安を抱きやすいのです。エンジン音が轟き機体が急加速する場面では、「もしエンジントラブルが起きたらどうしよう」「ちゃんと浮上できるのか」といった最悪のシナリオを想像してしまい、怖さが増幅される傾向があります。
理由2:急激な加速や浮遊感など身体感覚による不安
離陸時特有の身体感覚も恐怖心の原因になります。滑走路での急加速から機首上げにかけて、シートに押し付けられるようなG(重力加速度)やふわっと浮く浮遊感を覚える人は多く、それがジェットコースターのような恐怖につながる場合があります。
離陸直後は機体が上昇角度をとるため座席が傾き、耳が気圧変化でキーンとなったり視界が地面から空へ急転換するなど、日常では味わわない刺激が連続することでパニックに近い不安を感じやすいのです。
これらの生理的反応自体は飛行機が正常に上昇している証拠ですが、体が驚いて心拍数や呼吸が乱れ、「怖い」という感情を引き起こす要因となります。
理由3:高所恐怖や閉所恐怖など心理的要因
離陸時の恐怖には、もともとの不安症傾向や他の恐怖症が影響する場合もあります。
例えば、高所恐怖症がある人は高度が上がるにつれて強い恐怖を感じやすく、閉所恐怖症がある人はドアが閉まり逃げられない飛行機内という環境自体に緊張が高まります。また、「自分で状況をコントロールできない」ことへの不安も心理的要因です。
実際、専門医療機関の解説によれば高所恐怖症や閉所恐怖症といった他の恐怖症が飛行機恐怖症を悪化させるケースが指摘されています。離陸時は席に拘束され身動きできないうえ、操縦はパイロット任せになるため、自分の意思で逃げられないことへの恐怖心が強まるのです。このような心理的要因が重なると、「また不安に陥るのでは」という予期不安まで生じて離陸前からパニックに陥ることもあります。


飛行機が離陸する時の恐怖を克服する方法
飛行機の離陸時の恐怖を和らげるには、主に3つの方法があります。
以下に具体的な克服策を順に解説します。
方法1:客観的な事実で不安を軽減する
客観的なデータに基づく安心材料を知ることで、離陸時の恐怖を和らげることができます。恐怖の多くは「万一事故が起きたら」という心配に由来しますが、実は航空機は全交通手段の中でも極めて安全です。
例えば、自動車事故で死亡する確率が約5,000分の1であるのに対し、飛行機事故で死亡する確率は約1億1,000万分の1と桁違いに低いとの分析があります。また仮に事故に遭遇しても生存率は95%にも達するとの米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査結果も報告されています。
このように飛行機事故は滅多に起こらず、万一起きても助かる可能性が非常に高いことを理解すれば、「離陸の瞬間に何かあったらどうしよう」という不安を理屈で落ち着かせる助けになります。
加えて、現代の旅客機は離陸前に綿密な点検を行い、天候や機材の条件が万全でない限りは飛び立たないなど安全対策が徹底されています。離陸直前に機長や客室乗務員が安全アナウンスをするのも、その対策の一環です。こうした情報を積極的に知ることで、「離陸は危険」という思い込みを和らげましょう。
方法2:離陸時にできる呼吸法やリラックス技術を活用する
恐怖を感じる瞬間こそ、呼吸法などリラクゼーション技術で心身を落ち着かせることが重要です。専門家は不安緩和の具体的手段として、離陸時に深呼吸や簡単な瞑想を行うことを推奨しています。
離陸滑走が始まったら、腹式呼吸でゆっくり息を吐き出し、次に鼻からゆっくり吸い込みます。この際、お腹や太ももの筋肉に軽く力を入れて「踏ん張る」ようにすると、体の震えや浮遊感への過敏な反応を抑える効果があります。
実際、英国の航空会社が開催する恐怖克服セミナーでも「Breathe and Squeeze」と呼ばれる呼吸法が紹介され、参加者が離陸時の不安を大幅に軽減できたという報告があります。呼吸に意識を向けることで余計なパニック症状を防ぎ、自律神経を整えて心拍数を落ち着かせることができます。
方法3:事前の準備と周囲のサポートで安心感を高める
離陸時の不安を軽減するには、搭乗前からできる準備や周囲のサポート活用も有効です。まず旅行計画に余裕を持つことが大切です。フライト当日に時間ギリギリで空港に着くような状況では心に余裕がなくなり、不安が増幅します。
早めに空港に到着して手続きを済ませ、搭乗前にリラックスできる時間を確保しましょう。次に座席選びもポイントです。高所への恐怖が強い人は窓側より通路側の席を選ぶと外の高さが視界に入らず安心できます。
逆に、景色を見た方が落ち着く人は翼より前方の窓側席を選ぶなど、自分の苦手に合わせた席位置を工夫してください。また離陸が怖いことを事前に周囲に伝えておくことも有効です。同行者がいる場合は率直に不安を共有し、離陸時に手を握ってもらったり会話で気を紛らわせてもらうと良いでしょう。
離陸が怖いのは自然なこと
飛行機の離陸が怖いと感じるのは、多くの人に共通する不安です。世界的にも相当数の人々が飛行機に乗る際に不安を覚えており、離陸時の独特の感覚や心理的プレッシャーが主な原因となっています。
本記事で述べたように、その恐怖心には「離陸は危険」という思い込みや、身体が感じる浮遊感、高所や閉所に対する元々の恐怖心などが関係しています。
しかし、適切な知識と対策によって離陸時の不安は克服可能です。飛行機の安全性に関するデータを知って心構えを変える、呼吸法などで緊張を緩和する、そして周囲のサポートを得て安心感を高めることで、離陸の恐怖は大きく和らげることができます。
怖さを完全になくすのは難しくても、「怖いけど対処できる」という自信が持てれば、空の旅はきっと今までより楽になるでしょう。ぜひここで紹介した克服方法を次のフライトで試してみてください。恐怖心と上手に向き合い、快適な空の旅を楽しめるようになることを願っています。
参考文献
- Magasinet Reis(ノルウェーの旅行情報サイト)「世界の3人に1人以上が飛行機に乗ることに不安を感じています」(2022年5月25日公開)URL: https://www.reis.no/ja/2022/05/mer-enn-en-av-tre-mennesker-i-verden-opplever-angst-for-a-fly/ (参照:2025年09月08日)
- PRESIDENT Online(プレジデント社)秋本俊二「『離陸3分 着陸8分』どちらがより危険か? 航空業界「魔の11分間」の実感値」(2017年8月5日)URL: https://president.jp/articles/-/22754参照:2025年09月08日)
- Cleveland Clinic(米国クリーブランドクリニック)「Aerophobia (Fear of Flying)(飛行機恐怖症の原因と治療に関する解説)」(最終更新2022年2月24日)URL: https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22431-aerophobia-fear-of-flying (参照:2025年09月08日)
- ライフハッカー・ジャパン「飛行機が怖い人へ。不安が消える「6つの事実」」(2019年6月6日)URL: https://www.lifehacker.jp/article/161125_fearofflying/ (参照:2025年09月08日)
- Business Insider Japan「初めてリラックスできた! 飛行機が怖い筆者が航空会社に教わった、恐怖心を和らげる呼吸法」(2023年10月7日)URL: https://www.businessinsider.jp/article/275853/(参照:2025年09月08日)
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