電動じゃないキックボードは公道で走れる?走行条件とルールを解説

電動じゃないキックボードは公道で走れる?走行条件とルールを解説

近年、電動キックボードに関する法改正が行われ、「一定の条件を満たした電動キックボードは歩道も走行可能」といったニュースが話題になりました。その影響もあってか、「電動ではない普通のキックボードなら公道を走ってもいいの?」と疑問に思う方も増えています。

大人向けの足こぎ式キックボードが普及し、通勤や移動に使いたいというニーズも高まっています。しかし結論から言えば、電動でないキックボードは、原則として公道を走ることはできません。

本記事では、その理由や法律上の位置づけ、公道で走れる条件や走行ルールについて、公的な情報源を引用しながら詳しく解説します。

目次

電動じゃないキックボードは公道可能?

結論として、電動ではないキックボードは基本的に公道を走れません。道路交通法上、非電動キックボードは自転車などの「車両」ではなく「遊具」に分類されるためです。警察庁も2021年に「原動機を有しないキックボードの利用者は道交法上の歩行者であり、軽車両には該当しない」と公式見解を示しています。つまり、歩行者と同じ扱いになるということです。

令和2年8月に警視庁交通部が作成した子供向けチラシにも、キックボードは「乗り物ではなく、遊ぶ道具」であり「道路で乗ってはいけません!」とはっきり記載されています。道路は本来、自動車や自転車、歩行者が通行する場所であり、キックボードで遊ぶ場所ではないというのが基本的な考え方です。

では、なぜ電動ではないキックボードは公道走行ができないのでしょうか。その根拠の一つが、道路交通法第76条第4項第3号の規定です。同条では「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為」を禁止しています。

簡単に言えば、人通り・車通りの多い道路上でローラースケートなどで遊ぶ行為は禁止されており、キックボードはこの「ローラースケート等に類する行為」に該当すると解釈されているのです。そのため、たとえ足こぎ式でも公道(特に車や人の往来が多い場所)でキックボードに乗れば道路交通法違反となるおそれがあります。

実際の運用においても、警察は非電動キックボードを「公道で乗るべきではない」と指導しています。ある事例では、キックボードで通勤中に警察官から「それは公道で乗ってはいけませんよ」と注意を受け、後日県警本部に問い合わせたところ「すべての公道で乗らないでください」との回答だったそうです。このように、現場の警察判断でも公道=走行不可とみなされるケースが一般的です。

キックボードで公道を走れる条件

前章で述べたように、現行法では電動ではないキックボードが自由に公道を走行できる条件は非常に限られています。基本的には「交通のひんぱんな道路」での使用は禁止されるため、ほとんどの公道で走行不可と考えてよいでしょう。

道路交通法で「交通のひんぱんな道路」の明確な定義は示されていませんが、道路の状況(幅員や車両・歩行者の通行量)によって個別に判断されるとされています。例えば両側に商店が並び買い物客でにぎわう道路であれば、「交通のひんぱんな状態」とみなされ違反となります。

それでは、「交通のひんぱんな道路」でなければ公道を走っても良いのか?という点ですが、法律上はグレーゾーンながら現実的には公道での走行は避けるべきです。

警察庁の見解通りキックボード利用者は「歩行者」の扱いであり、仮に歩道や人通りのない路地であれば直ちに違反とはならない可能性もあります。実際、交通量が極端に少ない生活道路や私有地、公園内などでは黙認されるケースもあるでしょう。

しかし、これらはあくまで例外的なケースと考えるべきです。どの程度なら「ひんぱんでない」と言えるか明確でない以上、判断は現場の警察官に委ねられます。上述のように地域によっては「公道はすべてひんぱん」と見なす判断もあり、利用者側で勝手に「この道路は大丈夫だろう」と判断するのは危険です。

結局のところ、非電動キックボードは日常的な移動手段には適しておらず、公共の道路で使用するには法的にも安全面でも大きな制約があると言えます。どうしても公道を走りたい場合は、2023年7月施行の改正法に適合した特定小型原付を利用するか、キックボードではなく自転車など適法な手段を選ぶのが現実的でしょう。

キックボードの走行ルール

以上のように電動でないキックボードは、公道では極めて制限が厳しい乗り物です。それでも歩行者の一種として条件付きで使用する場合、どのようなルールやマナーを守る必要があるでしょうか。ここからは、キックボード走行時に特に注意すべきルールを3つに分けて説明します。

その1:交通量の多い道路では絶対に使用しない

まず 「交通のひんぱんな道路では乗らない」ことが鉄則です。これは法律上の禁止事項であると同時に、安全確保の面から最も重要なルールです。前述のように道路交通法でローラースケート等の行為が禁じられる「交通のひんぱんな道路」には明確な基準がありませんが、車や歩行者の通行がある程度でも存在する道路は基本的に当てはまると考えるべきでしょう。

道路や歩道は遊ぶ場所ではなく、不特定多数が行き交う公共のスペースです。そのような場所でキックボードに乗れば、周囲に迷惑をかけたり接触事故を起こすリスクが高まります。

実際、JAF(日本自動車連盟)の解説でも「周囲の交通に迷惑とならないよう、人や車の交通がひんぱんな道路を避けて遊ぶ必要がある」とされています。公道でのキックボード走行は「ダメ」と認識し、特に自動車や歩行者の多い道路・場所では絶対に使用しないよう徹底しましょう。

その2:歩道では歩行者に配慮し、安全な速度で走行する

電動ではないキックボードは法律上「歩行者」として扱われるため、歩道を通行すること自体は可能です。しかし、だからといって歩道上を好き放題に走って良いわけではありません。歩道は本来自転車でさえ徐行が義務付けられる、歩行者優先の空間です。キックボードで歩道を利用する際は、周囲の歩行者への配慮と安全確保を最優先にしてください。

具体的には、まず歩行者が多く行き交う混雑した歩道では使用を控えるべきです。人通りの激しい場所でキックボードに乗ると、他の歩行者の進路を妨げたり接触事故につながる危険があります。静かな住宅街の歩道と駅前繁華街の歩道では状況が全く異なるため、混雑している所では素直にキックボードを降りて歩くか、利用そのものを避けましょう。

また、スピードの出しすぎは厳禁です。勢いよく地面を蹴れば想像以上のスピードが出ますが、歩道では常に歩く人たちのペースに合わせ、ゆっくり徐行しましょう。特に子どもや高齢者が近くにいる場合は、いつでも停止できるよう一層の減速が求められます。すれ違いざまは停止するくらいの慎重さが安全です。

その3:ヘルメットなど必要な安全対策を心がける

最後に、安全装備と対策についてです。非電動キックボードの場合、現行法ではヘルメット着用義務などの規定は特にありません。運転免許や車両登録も不要で、基本的にはおもちゃ扱いのため装備品に関する決まりもありません。しかし、だからこそ利用者自身が主体的に安全対策を講じる必要があります。

まず、ヘルメットの着用は強く推奨されます。法律上は義務でなくとも、頭部を守るヘルメットは万一の転倒・衝突時に命を救う重要な役割を果たします。

事実、電動キックボードでは重大事故が相次いだことからヘルメット着用(努力義務)が新たに盛り込まれましたし、自転車でも2023年より全ての利用者にヘルメット着用努力義務が課されています。足こぎ式キックボードも例外ではなく、乗る際は可能な限りヘルメットを被ることをお勧めします。

特にお子さんが遊ぶ場合は、保護者の方はヘルメットやプロテクター(膝あて・肘あて)を着用させ、安全に関するルールをしっかり教えてあげてください。

また、キックボード本体の整備・点検も怠らないようにしましょう。ブレーキ付きのモデルであればブレーキの効き具合を事前に確認し、タイヤやボード部分に破損がないかチェックしてください。夜間は基本的に走行しない方が良いですが、やむを得ず薄暗い時間帯に使用する場合はライトや反射材を活用して被視認性を高めるなど、自分の存在を周囲に示す工夫も必要です。事故を未然に防ぐために、「自分は歩行者であり非常に弱い立場」という意識を常に持ち、安全第一で行動しましょう。

公道がダメなら歩道を走るの?

ここまでの説明でお分かりのように、電動ではないキックボードは車道を含む交通量の多い公道では走行できません。では、「公道がダメなら歩道なら良いのか?」という点について整理します。

結論から言えば、歩道であれば法的に許容される場合がありますが、条件次第です。キックボード利用者は道交法上「歩行者」に当たるため、歩行者として歩道を通行すること自体は可能と解釈されます。実際、法律上も「車道を走ってはいけない」という規定はあっても、「歩道を走ってはいけない」という規定は明示されていません。したがって、信号のある横断歩道をキックボードに乗ったまま渡ったからといって直ちに違法というわけではなく、基本的には歩行者扱いで歩道を進む形になります。

しかし重要なのは、歩道であっても「交通のひんぱんな道路」の一部である以上、状況次第では禁止され得るということです。道路交通法76条の規定は「道路(歩道を含む)」での行為を指しており、人通りの多い歩道もまた「交通のひんぱんな状態」と判断されればその場で乗ることは禁止されます。

実際、警察官の職務質問や補導事例では「歩道であっても乗らないように」と指導されるケースが見られます。要するに、歩道なら無条件でOKというわけではなく、他の歩行者の安全を脅かすような状況ではアウトということです。

一方で、人通りがほとんどない田舎道の歩道や、公園内の広場のように周囲に誰もいない環境であれば、キックボードに乗っていても現実には問題視されにくいでしょう。法律上も「交通のひんぱんな道路では…禁止」とあるため、人も車も滅多に来ない場所なら直ちに道交法違反とはなりません。

ただ、その場合でも万一第三者にぶつかったり転倒した場合の危険はつきまといます。また、前触れなく車や人が現れる可能性もゼロではありません。したがって、たとえ閑散とした場所でも油断せず慎重に走行することが求められます。

まとめ

電動ではないキックボードの公道走行について、その法律上の扱いとルールを解説してきました。ポイントを整理すると以下の通りです。

  • 非電動キックボードは道路交通法上「軽車両」ではなく「歩行者扱いの遊具」で、公道(特に車道)を走行することは認められていません。道路が「交通のひんぱんな状態」であればローラースケート等と同様に禁止行為となり、警察も基本的に公道では乗らないよう指導しています。
  • 公道を走れる例外的な条件としては、交通量が極めて少ない道路や私有地内などが考えられます。しかし「ひんぱん」でないかの判断は難しく、現実にはほとんどの公道で走行不可と見ておくのが無難です。どうしても公道で移動手段に使いたい場合は、新ルールの適用される電動キックボードや自転車など、適法な乗り物を利用しましょう。
  • 歩道上であれば状況次第で走行可能ですが、これはあくまで「歩行者として通行する場合」に限られます。人通りの多い歩道では危険なので乗らない、走る時も歩行者最優先で徐行・一時停止を徹底するなど、周囲への配慮と安全確保が絶対条件です。混雑する場所ではキックボードから降りて歩く判断が必要になります。
  • 安全対策も万全に。法律上ヘルメット義務はありませんが、事故防止のためヘルメットやプロテクターの着用を強く推奨します。特に子どもが使用する際は保護者がルールとマナーを教え、必ず見守るようにしてください。ブレーキなど装備のある製品でも過信は禁物で、常に自分が弱者である意識を持って慎重に走行しましょう。
よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次