鉄道の人身事故でバラバラになるのは本当か?体の一部が飛び散る要因を考察

鉄道の人身事故でバラバラになるのは本当か?体の一部が飛び散る要因を考察

みなさんのなかにも、人身事故の影響によって電車が止まった場面に直面したことのある人たちもいるでしょう。学校や職場に通うために毎日のように移動手段として電車を使っていれば、飛び込み自殺による運転見合わせに巻き込まれてしまうおそれはあると言わざるを得ません。

恐ろしいことに、電車のような凄まじいスピードで移動する乗り物にぶつかると、遺体はとんでもない姿になってしまうといいます。実際のところ、それは本当なのでしょうか?

この記事では、「鉄道の人身事故でバラバラになるのは本当なのか?」という疑問について考察しています。また、体の一部が飛び散ってしまう要因やマグロ拾いと呼ばれる仕事にも言及しているので、興味のある人たちは参考にしてみてください。

目次

鉄道の人身事故でバラバラになるのは本当なのか?

さて、鉄道の人身事故では、遺体がバラバラになるのは本当なのでしょうか?

結論から言えば、電車に跳ねられた遺体はバラバラになる可能性が高いと考えられます。

在来線の通勤電車は最高速度130km/h、特急列車まで含めると最高時速160km/hに達します。また、一般的な通勤電車は、11両編成で約350トンという重量があります。この重量は大型トラック約100台分に相当し、この重量が高速で移動する際に発生する運動エネルギーは、実に膨大な量となります。

物理法則に基づくと、この運動エネルギーは質量と速度の二乗に比例して増加していきます。そのため、高速で走行する列車との衝突では、想像を超える衝撃が発生するのです。生身の人間がこの衝撃を受けて、五体満足ではいられないことは、容易に想像がつくでしょう。

飛び込み事故で体の一部が飛び散る要因

飛び込み事故による被害の要因として、以下のような物理的影響が考えられます。

第一の要因は、列車本体との直接的な衝突による衝撃です。先述した通り、列車は膨大な運動エネルギーを持っています。高速で走行する数百トンの車両との衝突は、通常の交通事故とは比較にならないほど大きな衝撃を生み出します。この衝撃は人体の耐えうる限界をはるかに超えるもので、瞬間的に体の一部が飛び散るほどの重度の損傷を引き起こします。

第二の要因は、車両下部の機械設備に巻き込まれる場合です。列車の床下には、モーターやブレーキ装置、車輪など、多くの堅固な機械部品が設置されています。これらの堅固で入り組んだ設備に体が巻き込まれることで、体の一部が飛び散る要因になるでしょう。

列車と人体の接触は一瞬で終わるものではありません。列車は制動をかけても、その重量と速度のために直ちに停止することは不可能です。そのため、衝突後も列車は一定距離を走行することになり、場合によってはこの間に複数の物理的な力が人体に加わることになるため、重度の損傷につながる可能性も高まります。

人身事故を「マグロ」と言う理由

また、鉄道業界には長年、人身事故の被害者を「マグロ」と呼ぶ隠語が存在します。この表現は公式には使われない業界用語で、その由来にはいくつかの説があります。

人身事故で列車に接触した遺体は、大きな衝撃により損傷が激しく、原形をとどめないことが多いとされています。その状態が、魚市場で頭や尾を切られて横たわるマグロの姿に似ていることから、この呼び方が生まれたと言われています。また、接触時の切断面がマグロの身の断面に似ているという説もあります。

このような呼び方が使われる背景には、日常的に人身事故に直面する職員の心理的負担があります。過酷な現場に携わる人々が、精神的ストレスから自身を守るために、感情を切り離す必要があったためと考えられています。

ただし、このような表現は被害者や遺族の感情を傷つける可能性があるため、鉄道会社では公式には使用を認めていません。人命に関わる事故を扱う際は、「人身事故」「列車接触事故」のような表現が使われるのが一般的です。このように、一つの業界用語の中にも、現場で働く人々の心理や、事故処理に関わる深刻な現実が映し出されているのです。

マグロ拾いの仕事は実在するのか?

なお、人身事故が発生した際の遺体回収作業を指して「マグロ拾い」という言葉が使われることがありますが、実際の現場対応は、厳格な手順と専門的な知識に基づいて行われています。

事故現場での遺体の回収や処理は、主に鉄道会社の専門職員と警察が担当します。駅員や保線作業員と呼ばれる専門職が、警察の指示のもと、慎重に作業を進めていきます。これは事故現場の保存や警察の捜査に関わる重要な作業であり、専門的な訓練を受けた人々によって行われる必要があるのです。

なお、インターネット上では「マグロ拾いのアルバイト」という噂が時折話題になりますが、これは事実ではありません。遺体の処理は法的・倫理的に極めて慎重に扱われるべき作業です。事故現場の保全や遺留品の収集など、細心の注意を要する作業を、専門的な訓練を受けていない一時的な従業員に任せることはできません。

また、人身事故は予測不可能な形で突発的に発生するため、いつ、どこで起こるかわからない事故に備えて、アルバイトスタッフを待機させておくことは、人件費の面からも非効率です。

飛び込んだ後が大変

人身事故発生時、鉄道職員は厳格な手順と精神的負担の大きい対応を求められます。運転士は列車を緊急停止し、指令所への報告や救急・警察への通報を行い、駅員は事故現場の規制と乗客の避難誘導を行います。警察による現場検証後、車両や線路の点検を経て運転再開が決定されます。鉄道職員はこの過程で過酷な業務に従事し、特に運転士や駅員は精神的にも大きな負担を抱えます。

一方、事故の影響は社会全体にも波及します。学校では授業や試験の遅延、企業では業務停止、医療機関では診療の混乱、商業施設では客足の減少が発生します。また、夜間の事故では帰宅困難者の発生が懸念されます。鉄道会社はホームドアの設置や駅員の巡回強化などを進めていますが、人身事故は現代社会が鉄道に依存していることを示しています。

2023年には全国で294人が鉄道事故で亡くなり、依然として人身事故が続いています。安全な利用と責任ある行動が社会の安定を支える重要な鍵となっています。

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この記事を書いた人

IKITECH編集部は交通(電車・SUICA・新幹線・飛行機)や郵便などの生活インフラを専門領域に記事形式で情報を伝達するプロフェッショナル集団です。生活インフラ分野に知見のあるライター、編集者、研究者、校閲者から構成されたチームで記事を制作しています。

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