通勤や通学に欠かせない電車の定期券ですが、その便利さゆえに「家族や恋人と定期券を使い回せば交通費を節約できるのでは?」と考える人もいるでしょう。特に 「他人名義の定期券を使っても改札でバレない?」 という疑問はインターネット上でもしばしば話題になります。
しかし、結論から言えば、他人の定期券を使うことは鉄道会社の規則で厳禁であり、発覚すれば高額な精算や処罰が待っています。
本記事では、まず 改札の「男女識別ランプ」で不正がばれるのか について解説し、そのうえで 定期券を使い回した場合に生じるリスク を3つ取り上げます。他人の定期券を借りることがいかに危険で割に合わない行為かを、公式ルールや専門家の情報をもとに考察していきます。
定期券の貸し借りは男女識別ランプでばれるのか?
異性間で定期券を貸し借りすれば、改札のランプ表示などで発覚する可能性があります。
鉄道の自動改札機には、定期券に登録された情報に応じてライトの色や音を変える機能があり、性別が異なる定期券を使えば通常と異なる表示が出る仕組みになっている場合があります。
具体的に言うと、 IC定期券のデータには利用者の性別や区分が含まれており、駅係員の持つモニター画面に表示されることがあります。さらに、一部の自動改札機では女性名義の定期券を通すと特定の色のランプが点灯する設計になっており、男性名義の場合と色分けされているケースもあります。
ただし、この男女識別の表示は自動的にアラームが鳴るわけではなく、最終的には人の目による確認です。駅員が常に全員の性別まで細かくチェックしているわけではありませんが、明らかに見た目の性別と定期券の情報が食い違う場合や、不審な行動が目立つ利用者がいる場合には監視の目が光ります。
改札前で挙動不審だったりキョロキョロしていると、職員から声をかけられ身分証の提示を求められることもあります。とりわけ、ラッシュ時ではなく余裕のある時間帯や有人改札では、係員がモニターの表示に気づいて発覚することも十分あり得るのです。
定期券を使い回すことで生じる3つのリスク
他人名義の定期券を使うことは鉄道会社の規則に反する不正乗車です。そのため、発覚した場合には次のような重大な3つのリスクが生じます。これから順に説明していきます。
その1:定期券が無効になり即時に没収される
鉄道各社の規約では、記名式の定期券は券面に記載された本人以外は利用できないと明記されています。例えば、JR東日本の「旅客営業規則」第168条では、他人が使用した定期券はその時点で無効となり回収される旨が規定されています。
実際、2023年末に夫の定期券を借りて改札を通った女性はその場で駅員に止められ、不正使用が判明したため定期券を没収されています。一度没収された定期券は戻ってきませんから、残りの有効期間がどれだけ残っていようとその時点で権利は失われてしまいます。
さらに悪いことに、一度不正が発覚すると一定期間、新たな定期券を発行してもらえない処分を受ける可能性もあります。武蔵野大学では学生に対し「通学定期券を他人に貸与すると定期券の没収だけでなく、罰金が科された上に定期券発行停止処分を受ける」と注意喚起しています。このように、一度の軽い気持ちの違反がその後長期間にわたり正規の定期券を持てなくなる事態を招くおそれもあるのです。

その2:高額なペナルティを支払う羽目になる
他人の定期券による不正乗車が見つかった場合、ただ乗りした分の運賃を清算するだけでは済みません。
鉄道会社は規則に基づき、定期券の利用開始日から発覚日まで毎日1往復乗車したものとみなして通常運賃を計算し、さらにその2倍相当の割増運賃を加算した金額を請求します。
簡単に言えば、通常の3倍の運賃を精算金として支払わなければならないのです。これは不正乗車に対する民事上のペナルティであり、鉄道会社が定める正規のルールです。
この精算額は場合によっては非常に高額になります。実際に2023年に話題になったケースでは、夫のSuica定期券を1回使っただけにもかかわらず、JR東日本から 約88万円 の支払いを請求されています。
この女性の場合、たった一日の不正使用でしたが、定期券の有効開始日からその日までの期間を対象に前述の計算式で増運賃が算出され、結果として百万近い金額になったのです。当人は「払えない」と改札で涙を流す事態となり、警察沙汰にまで発展しました。「一日くらいバレないだろう」では済まず、発覚すれば数十万円規模の負担を強いられるリスクがあることを肝に銘じる必要があります。

その3:場合によっては詐欺罪など刑事罰に発展する恐れも
定期券の不正利用は、鉄道会社から見れば本来支払われるべき運賃を欺いて免れた行為であり、広い意味での詐欺的行為とみなされます。悪質なケースでは鉄道会社が警察に被害届を提出し、刑法上の詐欺罪等で立件される可能性もあります。
行政書士の柘植輝氏も「定期券の不正利用が悪質だと判断されれば詐欺罪で刑事告訴される可能性がある」と指摘しており、詐欺罪が成立すれば10年以下の懲役という非常に重い罰則を科され得ると解説しています。

すなわち、鉄道会社が本気で措置をとれば 前科がついてしまうこともあり得るのです。また、不正乗車は会社や学校など外部にも発覚する可能性があり、社会的信用を失墜させる大きなリスクも孕んでいます。つまり他人の定期券を借りる行為は、金銭的な損失だけでなくキャリアや人生に取り返しのつかない傷を残しかねない非常に危険な違反行為なのです。
他人の定期を使うのはNG!絶対にやめよう
以上のように、他人名義の定期券を使うことは鉄道の利用規約で明確に禁止されており、発覚すれば厳しいペナルティが科せられます。たとえ家族や恋人同士であっても例外はなく、「同じ区間だから大丈夫」「一度きりだから平気」という言い訳は通用しません。
鉄道会社の定期券は「記名人本人に限って割引運賃で乗車を許可する契約」に基づいて発行されており、その契約は購入者本人との間だけで成立しています。
他人が自由に使えるのであれば割引制度自体が成り立たなくなるため、誰が使っても良い持参人式定期券など一部の特別な場合を除き、記名式定期券の貸し借りは厳格に禁じられているのです。
要するに、他人の定期券を使う行為は 、「有効な乗車券を持たずに電車に乗るのと同じ」であり、正規運賃を支払っている多数の利用者との公平性を著しく損なう違反です。鉄道各社もこのような不正乗車を見逃すことはなく、発見した場合は毅然とした対処を行います。
一時的な節約のつもりが、結果的に大きな代償を払うことになるリスクを考えれば、他人の定期券を借りることなど絶対に避けるべきと言えるでしょう。
ルール違反は必ず問題になり割に合わない
定期券の使い回しは「バレなければ得」どころか、発覚すれば人生を揺るがしかねない重大な問題を引き起こします。改札では性別情報の表示や駅員のチェックによって不正が露見する可能性があり、見つかれば定期券は没収、過去に遡った高額請求や場合によっては刑事処分まで科される恐れがあります。
実際に「一度だけ」のつもりの違反で何十万円もの請求を受け、泣き崩れる羽目になった例も報告されています。こうしたリスクや失うものの大きさを考えれば、規則違反の定期券貸し借りは決して割に合う行為ではありません。
鉄道ライターの指摘にもあるように、「定期乗車券の不正使用は万引きと同じ」であり、「人生を賭けてまでやることではない」と断言できます。交通機関を利用する際はルールを守り、正規の乗車券や定期券を自分のために購入して使うのが鉄則です。
ほんのわずかな金銭的得を狙ってルール違反をすれば、結局は何倍もの損失と深刻な信用失墜となって返ってきます。定期券の貸し借りは絶対に行わず、ルールに沿った公正な利用を心がけましょう。
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